顔が良い妹の方が相応しいと婚約破棄したではありませんか。妹が無能だったなんて私の知ったことではありません。
78.肯定的な反応
「歌手か。それは確かに、案外悪くない道かもしれないな」
「お兄様もそう思いますか?」
「ルルメリーナを矢面に立たせることにいくらかの心配はあるが……ラスタリア伯爵家の評価を民達からも高められそうだ」
ルルメリーナの案をお兄様に伝えた所、肯定的な反応が返ってきた。
妹の魅力というものを最大限に活かす方法として、歌手というのはやはり有効そうだ。
ルルメリーナには歌姫として活躍してもらい、ラスタリア伯爵家の名を王国中に広めてもらうとしよう。それはきっと、家の利益に繋がっていく。
「えっへん。私、すごい案を思いついちゃいましたね?」
「ええ、本当に良い案だと思うわ。多分、お父様やお母様も納得してくれるでしょう」
「ルルメリーナには人を惹きつける魅力がある。それを活かす方法を両親も模索していた。単に婚約しただけでは、それが活かせているとは言えなかった。しかし、この案なら多くの者に影響を与えられる。それは、父上や母上が望んでいたことだ」
ルルメリーナの人気を考えれば、貴族との婚約は得策とは言えないのかもしれない。
婚約したとて、その人気がなくなるとは思えないが、多少は下がるのが目に見えているからだ。
歌手として活動してもらえば、その人気を保ったままにできる。元々のファンに加えて、平民のファンも取り込めれば万々歳だ。
「あれぇ? なんか二人とも、悪いことを考えていますかぁ?」
「え? 悪いことなんて、考えてないわよ? そうですよね、お兄様」
「ああ、俺達は単に貴族としてのこれからを考えていただけに過ぎない」
私とお兄様は、結構悪い顔をしていたらしい。
ただこれは、別に悪いことを考えていたという訳でもないだろう。ラスタリア伯爵家のためになる案を、考えていたというだけだ。
「あっ」
「うん? リフェリナ? どうかしたのか?」
「いいえ、大事なことを思い出しました。お兄様に話があります」
「話?」
「ええ、お兄様の婚約に関する話です」
「……何?」
私の言葉に、お兄様はその表情を歪めていた。
できれば避けたいものだということが伝わってくる。
ただ、これは避けていても仕方のないことだ。ルルメリーナと違って、嫡子であるお兄様には結婚が必須である。いつまでも目をそらしていたって仕方ない。
「一体、何の話をしようというのだ」
「婚約の相手の話です。少し考えたのですけれど、ネセリアはどうですか?」
「……え?」
私の言葉に声を出したのは、お兄様ではなくネセリアだった。
彼女とノルードは、ずっとこの場で話を聞いていた。それは使用人として、当然のことだ。主人達の会話に、口を挟んでいい訳がない。
ただそれでも、ネセリアは声をあげてしまった。それはそれだけ、私が言ったことが信じられないことだったからだろう。
「お兄様もそう思いますか?」
「ルルメリーナを矢面に立たせることにいくらかの心配はあるが……ラスタリア伯爵家の評価を民達からも高められそうだ」
ルルメリーナの案をお兄様に伝えた所、肯定的な反応が返ってきた。
妹の魅力というものを最大限に活かす方法として、歌手というのはやはり有効そうだ。
ルルメリーナには歌姫として活躍してもらい、ラスタリア伯爵家の名を王国中に広めてもらうとしよう。それはきっと、家の利益に繋がっていく。
「えっへん。私、すごい案を思いついちゃいましたね?」
「ええ、本当に良い案だと思うわ。多分、お父様やお母様も納得してくれるでしょう」
「ルルメリーナには人を惹きつける魅力がある。それを活かす方法を両親も模索していた。単に婚約しただけでは、それが活かせているとは言えなかった。しかし、この案なら多くの者に影響を与えられる。それは、父上や母上が望んでいたことだ」
ルルメリーナの人気を考えれば、貴族との婚約は得策とは言えないのかもしれない。
婚約したとて、その人気がなくなるとは思えないが、多少は下がるのが目に見えているからだ。
歌手として活動してもらえば、その人気を保ったままにできる。元々のファンに加えて、平民のファンも取り込めれば万々歳だ。
「あれぇ? なんか二人とも、悪いことを考えていますかぁ?」
「え? 悪いことなんて、考えてないわよ? そうですよね、お兄様」
「ああ、俺達は単に貴族としてのこれからを考えていただけに過ぎない」
私とお兄様は、結構悪い顔をしていたらしい。
ただこれは、別に悪いことを考えていたという訳でもないだろう。ラスタリア伯爵家のためになる案を、考えていたというだけだ。
「あっ」
「うん? リフェリナ? どうかしたのか?」
「いいえ、大事なことを思い出しました。お兄様に話があります」
「話?」
「ええ、お兄様の婚約に関する話です」
「……何?」
私の言葉に、お兄様はその表情を歪めていた。
できれば避けたいものだということが伝わってくる。
ただ、これは避けていても仕方のないことだ。ルルメリーナと違って、嫡子であるお兄様には結婚が必須である。いつまでも目をそらしていたって仕方ない。
「一体、何の話をしようというのだ」
「婚約の相手の話です。少し考えたのですけれど、ネセリアはどうですか?」
「……え?」
私の言葉に声を出したのは、お兄様ではなくネセリアだった。
彼女とノルードは、ずっとこの場で話を聞いていた。それは使用人として、当然のことだ。主人達の会話に、口を挟んでいい訳がない。
ただそれでも、ネセリアは声をあげてしまった。それはそれだけ、私が言ったことが信じられないことだったからだろう。