野獣と噂の王太子と偽りの妃
十二月になり、プリムローズは妊娠六ヶ月目に入った。

「プリムローズ様。今日も野菜と果物がたくさん届きましたよ。ほら！」

レイチェルが大きなカゴを抱えて、部屋に入って来た。

ソファで編み物をしていたプリムローズは、大きくなってきたお腹を抱えて立ち上がる。

「まあ！立派な野菜ね。果物もよく熟して美味しそう」
「ええ。誰もがプリムローズ様の体調を気遣って、元気な赤ちゃんを、と言っていましたわ」
「ありがたいわ。とっても嬉しい」

プリムローズは笑顔で、大きくて丸いオレンジを手に取る。

毎日届けられるオレンジを搾り、フレッシュなジュースをマルクスと味わいながら、二人は国民の優しさに嬉しくなっていた。

今やシルベーヌには、多くのカルディナ国民が移り住み、マルクスを王太子と認めて敬っている。

プリムローズの妊娠は、シルベーヌとカルディナ、どちらの国民にとっても明るい話題で、まるでこれからの国の繁栄を象徴しているようだと喜ばれた。

そんな国民の気遣いがありがたく、マルクスにも優しく大切にされ、プリムローズは日に日に大きくなるお腹をなでながら、幸せな毎日を送っていた。
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