野獣と噂の王太子と偽りの妃
「うわー、可愛い!それになんて整ったお顔。既にハンサム!」

プリムローズの産後の処置も済み、セドリックも産湯に浸かって綺麗になると、サミュエルが部屋に入って来た。

マルクスが抱いたセドリックをひと目見るなり、サミュエルは目を輝かせる。

「サミュエル。レイチェルと一緒に抱っこしてやってくれる?」

プリムローズの言葉に、二人は、え?!と驚く。

「よろしいのですか?」
「もちろんよ」

するとマルクスがサミュエルに近づき、腕にそっとセドリックを預けた。

「わっ!き、緊張する」

ガチガチに固まったサミュエルの腕を、横からレイチェルが手を伸ばして支える。

「わー、なんて清らかで美しいお顔なの。もう生まれながらにして王子様ね」
「本当に。セドリック王子。私は一生あなたに忠誠を誓います」
「わたくしもですわ、セドリック王子」

サミュエルとレイチェルの真面目な口調に、プリムローズとマルクスは笑い出す。

「二人とも、セドリックを一緒に育ててくれたら嬉しいわ。どうぞよろしくね」
「そうだな。頼んだぞ、じいやにばあや」

ええ?!と、二人はマルクスを振り返る。

「あはは!冗談だよ。時には兄弟のように、時には俺達親の代わりに、この子を見守ってやってくれ」

サミュエルとレイチェルは、しっかりと頷く。

「恐れながら、我々も必ずやセドリック様を近くでお守りいたします。どうかすくすくと成長されますように」
「ああ、ありがとう」

四人はセドリックを囲み、その寝顔を見つめながら笑顔を浮かべていた。
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