野獣と噂の王太子と偽りの妃
「プリムローズ様、わたくしが代わります」

何度もタオルを冷やしては載せ替えていると、レイチェルが横から手を伸ばしてきた。

「いいえ、大丈夫です。それより陽が落ちて、どんどん気温が下がってきています。あの暖炉は使えますか?」

壁際の暖炉に目をやると、レイチェルが頷く。

「ええ。今準備いたしますね」

サミュエルも手伝い、暖炉に火を灯して薪をくべる。

ぱちぱちと薪が燃える微かな音がする中、ほのかな灯りに照らされた王太子の様子を、プリムローズは真剣に見守った。

目を閉じてよく眠っているが、やはり熱が高いせいだろう。
呼吸も荒く、額には汗がひっきりなしに滲む。

少しでも楽になるようにと、プリムローズは己の手が冷たくなるのも構わず、何度も氷水にタオルを浸して王太子の汗を拭った。
< 12 / 114 >

この作品をシェア

pagetop