野獣と噂の王太子と偽りの妃
ドクターに再度診察してもらうと、傷は快方に向かっているが身体の疲れから免疫力が落ちているから、まだしばらくは安静に、と言われ、引き続きプリムローズ達は懸命に看病に当たった。

汗と血で汚れた服を着替えさせ、少しずつ食事の量を増やして薬を飲ませる。

傷口を消毒してからガーゼを当て、くるくると包帯を巻くプリムローズに、王太子がポツリと呟いた。

「手際がいいな。看護学校に行っていたのか?」
「いいえ、王立の女学校です。妹がよくケガをするので、こういう手当は何度もしておりました」
「そうか」

そんなふうに少し会話をすることも増えてくる中、プリムローズはふと、あることに疑問を抱いた。

(どなたも王太子殿下のお見舞いにいらっしゃらない。国王陛下や王妃陛下は、ご心配ではないのかしら。それにお世話するのもレイチェルとサミュエルだけで、他の人を見かけないし)

『生活の何もかもが王太子殿下らしからぬもの』と言っていたレイチェルの言葉を思い出す。

(どうしてなのかしら。次期国王となられる方なのに、お住いも離れだなんて)

気にはなるが、聞いてはいけない質問だろう。

プリムローズは、今はただひたすら看病に徹した。
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