野獣と噂の王太子と偽りの妃
新しい生活
「プリムローズ様!いけません、わたくしがやりますから!」
窓の拭き掃除をしていたプリムローズに、レイチェルが駆け寄って止める。
「あら、レイチェル。もう忘れたの?私があなたに敬語を使うのをやめる代わりに、あなたは私のすることを止めない約束でしょう?」
「ですがいくらなんでも、プリムローズ様にこんなことはさせられません!」
「いいのよ。好きでやっているのだから」
「いいえ、いけません!」
二人はしばらく雑巾の奪い合いを繰り広げる。
数日前、プリムローズが王太子妃候補としてここに留まることになったとマルクスが告げると、レイチェルは大喜びした。
だがそれは表向きの話で、実際は使用人として仕えるのだとプリムローズが話すと、レイチェルは一転してそれを認めなかった。
「言ったでしょう?レイチェル。私は王太子妃候補のフリをしているだけだって」
「ですが、殿下はプリムローズ様に使用人の仕事をさせるなんて、ひと言もおっしゃってませんわ」
「だけど、私の好きなように過ごしていいと言ってくださったのよ?」
「ですからそれは!掃除ではなく、のんびり優雅にお茶でも飲んでお過ごしいただくという意味で…」
その時、窓の外から馬の蹄の音が聞こえてきて、二人は顔を見合わせる。
「殿下がお帰りになったわ!」
左腕のケガが治るやいなや、マルクスはサミュエルを連れて、また国境の視察に向かっていたのだった。
雑巾を放り出し、プリムローズとレイチェルは我先にと階段を下りてエントランスに出迎えに行く。
「プリムローズ様はお部屋でお待ちくださいませ」
「いいえ、私は使用人ですもの。お出迎えしなければ」
「ですから!プリムローズ様は使用人ではございません!」
「使用人だからここに住まわせていただいてるの!」
小競り合いをしながらエントランスに二人で並び、マルクスが馬から降りると、にこやかにお辞儀をする。
「お帰りなさいませ、殿下」
「ああ」
マルクスは馬の手綱をサミュエルに託し、屋敷の中に入る。
レイチェルとプリムローズは再び互いを牽制し合いながら、マルクスの行く先のドアを開けた。
窓の拭き掃除をしていたプリムローズに、レイチェルが駆け寄って止める。
「あら、レイチェル。もう忘れたの?私があなたに敬語を使うのをやめる代わりに、あなたは私のすることを止めない約束でしょう?」
「ですがいくらなんでも、プリムローズ様にこんなことはさせられません!」
「いいのよ。好きでやっているのだから」
「いいえ、いけません!」
二人はしばらく雑巾の奪い合いを繰り広げる。
数日前、プリムローズが王太子妃候補としてここに留まることになったとマルクスが告げると、レイチェルは大喜びした。
だがそれは表向きの話で、実際は使用人として仕えるのだとプリムローズが話すと、レイチェルは一転してそれを認めなかった。
「言ったでしょう?レイチェル。私は王太子妃候補のフリをしているだけだって」
「ですが、殿下はプリムローズ様に使用人の仕事をさせるなんて、ひと言もおっしゃってませんわ」
「だけど、私の好きなように過ごしていいと言ってくださったのよ?」
「ですからそれは!掃除ではなく、のんびり優雅にお茶でも飲んでお過ごしいただくという意味で…」
その時、窓の外から馬の蹄の音が聞こえてきて、二人は顔を見合わせる。
「殿下がお帰りになったわ!」
左腕のケガが治るやいなや、マルクスはサミュエルを連れて、また国境の視察に向かっていたのだった。
雑巾を放り出し、プリムローズとレイチェルは我先にと階段を下りてエントランスに出迎えに行く。
「プリムローズ様はお部屋でお待ちくださいませ」
「いいえ、私は使用人ですもの。お出迎えしなければ」
「ですから!プリムローズ様は使用人ではございません!」
「使用人だからここに住まわせていただいてるの!」
小競り合いをしながらエントランスに二人で並び、マルクスが馬から降りると、にこやかにお辞儀をする。
「お帰りなさいませ、殿下」
「ああ」
マルクスは馬の手綱をサミュエルに託し、屋敷の中に入る。
レイチェルとプリムローズは再び互いを牽制し合いながら、マルクスの行く先のドアを開けた。