野獣と噂の王太子と偽りの妃
「殿下、紅茶をどうぞ」
レイチェルがソファに座ったマルクスの前にティーカップを置くと、負けじとプリムローズも歩み寄る。
「マルクス様。よろしければこちらもどうぞ」
そう言ってプリムローズは、ガトーショコラを載せたケーキ皿をテーブルに置いた。
ティーカップを持つ手を止めて、マルクスは驚いたように言う。
「これは?ひょっとしてそなたが作ったのか?」
「はい。マルクス様はビターなチョコレートがお好きだとうかがったので、ほろ苦いガトーショコラを焼いてみました。わたくしの手作りなど気味が悪いとおっしゃるなら、すぐに下げます」
「いや、いただこう」
マルクスは皿を左手で持ち上げ、ゆっくりとフォークを入れた。
横に添えてある甘みの少ないホイップクリームを少し絡めてから口に運び、じっくりと味わう。
プリムローズは固唾を飲んで、マルクスの様子をじっと見守った。
「…美味しい」
小さく呟くマルクスに、プリムローズは嬉しそうに笑いかける。
「よかったです。お口に合いますか?」
「ああ。しっとりして口当たりもいいし、濃厚だが少し苦味もあって、好みの味だ」
「まあ!マルクス様、グルメ評論家のようにコメントがお上手ですのね」
「は?!」
プリムローズのセリフが意外過ぎたのか、マルクスは眉間にしわを寄せて怪訝な面持ちになる。
「この味がお好みでしたら、コーヒーとシナモンのパウンドケーキもきっとお好きかもしれません」
満面の笑みを浮かべるプリムローズにたじろぎつつ、マルクスは聞いてみる。
「それも、そなたが作れるのか?」
「ええ。わたくしの得意のお菓子、トップスリーのうちの二番目です」
「では一番目は?」
「オレンジ風味のフィナンシェです。すりおろしたオレンジの皮を混ぜて作ります」
「オレンジの?!それはぜひ食べてみたい」
「本当ですか?」
「ああ。オレンジは毎日欠かさず食べるほど好きなんだ」
「そうなのですね。でしたら、早速明日作りますわ。オレンジを使ったお菓子は他にも、オレンジグラニテやオレンジリキュールのレアチーズケーキなども作れます」
「なにっ?!それは絶対に食べてみたい」
真剣に身を乗り出すマルクスに、プリムローズは、ふふっと笑う。
「かしこまりました。ではこれから毎日、順番に作りますね」
「ああ、楽しみにしている」
「はい!」
プリムローズは嬉しそうにマルクスに頷いてみせた。
レイチェルがソファに座ったマルクスの前にティーカップを置くと、負けじとプリムローズも歩み寄る。
「マルクス様。よろしければこちらもどうぞ」
そう言ってプリムローズは、ガトーショコラを載せたケーキ皿をテーブルに置いた。
ティーカップを持つ手を止めて、マルクスは驚いたように言う。
「これは?ひょっとしてそなたが作ったのか?」
「はい。マルクス様はビターなチョコレートがお好きだとうかがったので、ほろ苦いガトーショコラを焼いてみました。わたくしの手作りなど気味が悪いとおっしゃるなら、すぐに下げます」
「いや、いただこう」
マルクスは皿を左手で持ち上げ、ゆっくりとフォークを入れた。
横に添えてある甘みの少ないホイップクリームを少し絡めてから口に運び、じっくりと味わう。
プリムローズは固唾を飲んで、マルクスの様子をじっと見守った。
「…美味しい」
小さく呟くマルクスに、プリムローズは嬉しそうに笑いかける。
「よかったです。お口に合いますか?」
「ああ。しっとりして口当たりもいいし、濃厚だが少し苦味もあって、好みの味だ」
「まあ!マルクス様、グルメ評論家のようにコメントがお上手ですのね」
「は?!」
プリムローズのセリフが意外過ぎたのか、マルクスは眉間にしわを寄せて怪訝な面持ちになる。
「この味がお好みでしたら、コーヒーとシナモンのパウンドケーキもきっとお好きかもしれません」
満面の笑みを浮かべるプリムローズにたじろぎつつ、マルクスは聞いてみる。
「それも、そなたが作れるのか?」
「ええ。わたくしの得意のお菓子、トップスリーのうちの二番目です」
「では一番目は?」
「オレンジ風味のフィナンシェです。すりおろしたオレンジの皮を混ぜて作ります」
「オレンジの?!それはぜひ食べてみたい」
「本当ですか?」
「ああ。オレンジは毎日欠かさず食べるほど好きなんだ」
「そうなのですね。でしたら、早速明日作りますわ。オレンジを使ったお菓子は他にも、オレンジグラニテやオレンジリキュールのレアチーズケーキなども作れます」
「なにっ?!それは絶対に食べてみたい」
真剣に身を乗り出すマルクスに、プリムローズは、ふふっと笑う。
「かしこまりました。ではこれから毎日、順番に作りますね」
「ああ、楽しみにしている」
「はい!」
プリムローズは嬉しそうにマルクスに頷いてみせた。