野獣と噂の王太子と偽りの妃
つかの間の平和
「プリムローズ。これから街へ出かけるが、そなたも行くか?」

ある日。
朝食を済ませて食器を片付けていたプリムローズは、マルクスに声をかけられて思わず聞き返す。

「マルクス様が街へ、ですか?」
「ああ、そうだ」
「大丈夫なのですか?王太子殿下がそのようにいきなり街へいらっしゃるなんて」
「王太子だとは思われていない。そなただって知らなかっただろう?王家の馬車も使わないから大丈夫だ。国民の暮らしぶりを見る為に定期的に街の様子を見に行くのだが、そなたの身の回りの物も必要だ。一緒に選びに行こう」
「いえ、それは結構です。レイチェルが客室に家具を揃えてくれて、何不自由なく使わせていただいておりますので」
「だがドレスなども足りないだろう?それに毎日ここにいては、息が詰まる。そうだ!市場に行って、果物や小麦粉を買おう。またお菓子を作ってくれないか?」

それを聞いて、プリムローズは目を輝かせる。

「はい!市場に行きたいです。マルクス様に作って差し上げたいお菓子がまだまだたくさんあるので」
「よし、決まりだ」

マルクスは頷くと、すぐにサミュエルに馬車の用意を頼んだ。
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