野獣と噂の王太子と偽りの妃
宮殿の大きな門扉を出てしばらくすると、窓の外に賑やかな街並みが見えてきた。
プリムローズは思わず窓の方へと身を乗り出す。
「そんなに珍しいか?」
マルクスの問いにプリムローズは頷いた。
「ええ。わたくしの住んでいた田舎とは大違いですわ。素敵なお店が並んでいて、人々の装いも華やかで。オシャレなカフェやレストランもあるのですね」
「それなら、ランチはどこかカフェで食べるか?」
「よろしいのですか?!」
目を輝かせるプリムローズに、マルクスは、ふっと笑って頷く。
「もちろん。その前にそなたのドレスを買おう」
「いえ、ですからそれは…」
断るプリムローズに構わず、マルクスは大きなブティックの前で馬車を止めさせると、プリムローズを店内に促した。
「どれでも好きなものを選べ」
「いえ、そんな。わたくしのものなど何も…」
「その為に来たのだぞ?まったく…」
小さくため息をつくと、マルクスは店員に声をかけ、プリムローズに似合うドレスを見繕うよう頼んだ。
「お嬢様には、明るい色がお似合いになるかと。水色のこちらのドレスはいかがですか?素材もふわりと軽く、爽やかな印象でございます。あとは、光沢のあるシルク素材の薄紫色のドレスも。それからこちらはいかがでしょう?温かみのあるオレンジ色で、シルクオーガンジーが何層も重ねてある、ゴージャスで凝ったデザインのドレスですわ」
次々とハンガーを掲げてみせる店員に、マルクスは大きく頷く。
「いいな。全てもらおう」
「ありがとうございます!」
プリムローズは慌ててマルクスの袖を後ろから引っ張った。
「ん?どうした?」
上機嫌で笑みを浮かべている店員に聞こえないよう、プリムローズは背伸びをしてマルクスの耳元に顔を寄せる。
「こんなにたくさん、いけません!マルクス様」
「なぜだ?」
「なぜって…。わたくしには必要ないからです」
「必要ない?ではそなたは服を着ないのか?」
「い、いえ、そういう意味ではなく。今ある物で足りておりますので」
「それなら俺の為に買おう。そなたがこのドレスを着ているところを見てみたい」
ええ?!と困惑しつつ、プリムローズはふとオレンジ色のドレスに目をやる。
「あっ、それほどマルクス様はオレンジがお好きなのですか?オレンジのマスコットキャラクターとか?」
ぶっ!とマルクスは思わず吹き出す。
「そなたがオレンジの妖精にでもなるのか?ははは!それもいいな。オランジェちゃん、とでも呼ぼうか」
「マルクス様!」
顔を赤くして抗議するもあっさりと聞き流され、結局全てのドレスが馬車に運び込まれた。
プリムローズは思わず窓の方へと身を乗り出す。
「そんなに珍しいか?」
マルクスの問いにプリムローズは頷いた。
「ええ。わたくしの住んでいた田舎とは大違いですわ。素敵なお店が並んでいて、人々の装いも華やかで。オシャレなカフェやレストランもあるのですね」
「それなら、ランチはどこかカフェで食べるか?」
「よろしいのですか?!」
目を輝かせるプリムローズに、マルクスは、ふっと笑って頷く。
「もちろん。その前にそなたのドレスを買おう」
「いえ、ですからそれは…」
断るプリムローズに構わず、マルクスは大きなブティックの前で馬車を止めさせると、プリムローズを店内に促した。
「どれでも好きなものを選べ」
「いえ、そんな。わたくしのものなど何も…」
「その為に来たのだぞ?まったく…」
小さくため息をつくと、マルクスは店員に声をかけ、プリムローズに似合うドレスを見繕うよう頼んだ。
「お嬢様には、明るい色がお似合いになるかと。水色のこちらのドレスはいかがですか?素材もふわりと軽く、爽やかな印象でございます。あとは、光沢のあるシルク素材の薄紫色のドレスも。それからこちらはいかがでしょう?温かみのあるオレンジ色で、シルクオーガンジーが何層も重ねてある、ゴージャスで凝ったデザインのドレスですわ」
次々とハンガーを掲げてみせる店員に、マルクスは大きく頷く。
「いいな。全てもらおう」
「ありがとうございます!」
プリムローズは慌ててマルクスの袖を後ろから引っ張った。
「ん?どうした?」
上機嫌で笑みを浮かべている店員に聞こえないよう、プリムローズは背伸びをしてマルクスの耳元に顔を寄せる。
「こんなにたくさん、いけません!マルクス様」
「なぜだ?」
「なぜって…。わたくしには必要ないからです」
「必要ない?ではそなたは服を着ないのか?」
「い、いえ、そういう意味ではなく。今ある物で足りておりますので」
「それなら俺の為に買おう。そなたがこのドレスを着ているところを見てみたい」
ええ?!と困惑しつつ、プリムローズはふとオレンジ色のドレスに目をやる。
「あっ、それほどマルクス様はオレンジがお好きなのですか?オレンジのマスコットキャラクターとか?」
ぶっ!とマルクスは思わず吹き出す。
「そなたがオレンジの妖精にでもなるのか?ははは!それもいいな。オランジェちゃん、とでも呼ぼうか」
「マルクス様!」
顔を赤くして抗議するもあっさりと聞き流され、結局全てのドレスが馬車に運び込まれた。