野獣と噂の王太子と偽りの妃
「はー、やれやれ」

詰所の一角にわらを大量に敷き詰め、その上にありったけの毛布を重ねてふわふわのベッドを作ると、カルロスは仕方ないとばかりに大きなため息をついて横になった。

そしてその直後にグーグー大いびきをかいて寝始めたのだった。

「まったくもう。何が大変って、あの方のお世話が一番困りますよ」

星空の下、見回りをしながらサミュエルがマルクスに愚痴をこぼす。

「確かにな。行き帰りだけで普段の倍以上時間がかかっているし」
「そうですよ。今日だって、本当なら今頃とっくに屋敷に着いてる頃なのに。あーあ、プリムローズ様もレイチェルも、心配してるだろうな」
「そうだな。宮殿の方には、今夜は詰所に泊まると連絡がいっているが、誰も離れには伝えてくれないだろう。まあ、仕方ない。明日できるだけ早く帰ろう」
「そうですね」
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