野獣と噂の王太子と偽りの妃
幸せと喜び
「マルクス様!」

翌日の昼前にようやく屋敷に着くと、プリムローズがエントランスの扉から急いで駆け寄って来た。

よく見ると、その目は今にも泣き出しそうに潤んでいる。

「心配いたしました。マルクス様、ご無事ですか?」
「ああ、大丈夫だ。心配かけたな」

アンディから降りると、マルクスはプリムローズの頭にポンポンと手をやる。

元気そうなマルクスの姿に、プリムローズはやっと安心して笑顔をみせた。

「よかった…。サミュエルも無事なの?」
「はい。どこも何ともありません、プリムローズ様」
「そう、本当によかったわ。アンディも元気?」

プリムローズが頭をなでると、アンディはブルルッと応える。

「ふふっ、元気そうね。喉が乾いたでしょう?お水をあげるわね」

手綱を引いて厩舎に向かおうとするプリムローズに、サミュエルが声をかける。

「プリムローズ様、私が…」
「大丈夫よ。サミュエルも先に部屋で休んでいて。レイチェルとすぐに行きます」

そう言うとサミュエルからも手綱を受け取り、プリムローズはレイチェルと厩舎へ向かった。
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