野獣と噂の王太子と偽りの妃
捕らえた男達は国境警備隊に任せ、三人はすぐに屋敷へと帰ることにした。

マルクスはプリムローズと一緒にアンディの背に乗り、後ろからプリムローズの身体に腕を回してしっかりと抱きしめる。

「このスピードでも怖くないか?」
「はい、平気です」

少しでも早くレイチェルを安心させたいと、プリムローズは急いで帰りたかった。

それにマルクスと一緒にアンディに乗っているのは、とても安心する。

何とも言えない幸せを感じながら、プリムローズはアンディの背に揺られていた。

するとアンディが走りながら、ふと後ろを振り返る。

白い歯を見せてニカッとマルクスに笑いかけると、マルクスはため息をついた。

「アンディ。お前、馬なのに人間をからかうとか、やめてくれ」

ん?何のこと?と、プリムローズもマルクスを振り返る。

「いや、いいんだ。何もない」

マルクスは咳払いすると、プリムローズに気づかれないよう、アンディに跨がっている両足にグッと力を込める。

アンディはまたしても、ヒヒッとからかうような声を出してから、前に向き直って更にスピードを上げた。
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