野獣と噂の王太子と偽りの妃
「お帰りなさいませ」

夕方になり、屋敷に帰って来たマルクスをレイチェルが出迎える。

「ああ」

小さく頷くと手綱をサミュエルに預け、マルクスは足早に部屋に入った。

湯に浸かって身体を温めると、夕食を食べる。

「今夜は温かいシチューでございます。お風邪を召されませんように」
「ありがとう」

マルクスは淡々と食事の手を進める。

レイチェルが最後にデザートを運んできた。

プレーンのチーズケーキ。

美味しいはずのチーズケーキを、マルクスは寂しさを噛みしめるように味わった。
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