野獣と噂の王太子と偽りの妃
プリムローズが離れを出てから一週間が経った。

「プリムローズ様、おはようございます」
「おはようございます」
「朝食をどうぞ」
「ありがとうございます」

今日もプリムローズは、一人寂しく食事を取る。

食事が終わればすることは何もなくなった。

(こんな毎日、息が詰まりそう)

庭園を散歩してもいいと言われたが、侍女と近衛隊にぐるりと周りを囲まれ、プリムローズは気が休まらなかった。

(そうだ!お菓子を作らせてもらおう)

そう思い、厨房に入らせて欲しいと侍女に頼むと、即座に断られる。

「お客様を厨房になど、いけませんわ」

プリムローズはしょんぼりと肩を落とす。

だがなんとか言い訳を考えた。

「えっと、それがわたくし、少し食べ物のアレルギーがありまして。自分で作ったデザートでないと、お腹を壊してしまいますの。お食事は大丈夫なのですが、デザートだけは自分で作りたくて」

言いながら、なんだそれは?と自分でも首をひねってしまう。

だが侍女達は、まあ!それは大変と納得してくれた。

「では、シェフ達が使っていない時間なら、ご自由に厨房をお使いいただいて構いませんわ」
「本当ですか?ありがとうございます!」

プリムローズは久しぶりに笑顔を浮かべた。
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