野獣と噂の王太子と偽りの妃
「国王陛下、それでは私はこれで失礼させていただきます」
「もう帰るのか?マルクス」

マルクスが挨拶に行くと、国王はもう少し話をしたいと引き留めた。

「お話はまたいずれ。今夜はこれにて失礼いたします」

もう一度頭を下げると、まだ何か言いたそうな国王に背を向けて、マルクスは足早に大広間を出る。

とにかく外に出て、頭を冷やしたかった。

今夜のパーティーは、必ず出席するようにと国王からきつく言われて、仕方なく顔を出していた。

少し遅れて到着し、挨拶を済ませたらさっさと退散するつもりだった。

ところが。

大広間に入った途端、マルクスは驚くべき光景を目にする。

大勢のゲストが見守る中、一組のカップルが軽やかにワルツを踊っていた。

カルロスと、もう一人は…

(プリムローズ?!)

驚き過ぎて、幻覚かと思った。

まじまじと見つめて、確信する。

間違いなく、会いたいと願い続けていたプリムローズがそこにいた。
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