野獣と噂の王太子と偽りの妃
手を滑らせた瞬間、地面に叩きつけられる衝撃を覚悟していたプリムローズは、誰かに身体を受け止められて恐る恐る目を開ける。

「え、アンディ?」

そう呟くと、はあ?と不機嫌そうな声がした。

プリムローズはハッとして顔を上げる。

自分を受け止め、強く抱きしめてくれていたのは…

「マルクス様!」

プリムローズの目から涙が一気に溢れ出す。

「マルクス様、本当にマルクス様なの?」
「ああ。本当だよ、プリムローズ」
「よかった。またお会いできて、嬉しい」
「俺もだ、プリムローズ」

プリムローズはただひたすらマルクスの胸に顔をうずめ、とめどなく涙を溢れさせる。

そんなプリムローズを、マルクスはギュッと腕に力を込めて強く抱きしめていた。
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