野獣と噂の王太子と偽りの妃
心を尽くす国王に
二月になり、結婚式の準備に追われながらも、マルクスはシルベーヌ国とギルガ王国、そしてここカルディナ王国とのこれからについて、日々思案していた。

ある程度考えをまとめると、国王に会議を開きたいと申し出る。

そしてマルクスはサミュエルと共に、地図と資料を持って宮殿の会議室に赴いた。

「それではまず、現状からご報告いたします」

国王、カルロス、宰相や大臣などの要人を前に、マルクスは地図を指し示しながら説明する。

「我がカルディナの国境警備隊を多く配置したおかげで、ギルガのシルベーヌへの攻撃は一見弱まったように見えました。ですが実際には、ギルガは密かにシルベーヌの領土に刺客を送り込んでいたのです。シルベーヌ国王の命を狙おうと、王宮に忍び込んで捕らえられた者もいます」
「なんと…。王宮にまで?」

マルクスは頷いてから、ざわつく大臣達を見渡して言葉を続ける。

「このままではシルベーヌがギルガにねじ伏せられるのは時間の問題かと。シルベーヌを制圧すれば、ギルガはここカルディナへの輸出を止めるつもりです。我々カルディナの国民が大変な生活苦を強いられるのは、なんとしても防がなければ。そして何より、ギルガの非道なやり方をまかり通してはなりません」

会議室に重苦しい雰囲気が広がる。

やがて国王が沈黙を破り、威厳のある低い声で告げた。

「シルベーヌ国と条約を結ぶ。我がカルディナの軍事力とシルベーヌの食料経済。互いに協力し補い合いながら、ギルガに対抗する為に」
「御意!」

各大臣達は、早急に条約の内容を協議し、シルベーヌ国と連携を取ることとなった。
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