野獣と噂の王太子と偽りの妃
「お帰りなさいませ」

カルロスと別れて屋敷に戻ってきたマルクスを、プリムローズが笑顔で出迎える。

「マルクス様、お疲れ様でした。少しお茶にしませんか?新しいデザートを作ったんです。ショコラムースにオレンジのジュレをかけて、ミントの葉で飾った…」

そこまで言った時、ふいにマルクスが後ろからプリムローズを抱きしめた。

「…マルクス様?」

小さく呟くプリムローズの耳元で、マルクスがささやく。

「すまん、少しだけこうさせてくれ」

マルクスの頭の中に、先程のカルロスの言葉とクリスマスパーティーでの出来事が蘇る。

(カルロスはきっと、本気でプリムローズのことを…)

そう考えると、思わずプリムローズを抱く腕に力を込めた。

プリムローズは自分の身体に回されたマルクスの両腕に、そっと優しく手を重ねる。

温かく柔らかいプリムローズの身体を腕に閉じ込めながら、マルクスは心がじんわりと癒やされるのを感じていた。
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