野獣と噂の王太子と偽りの妃
「知らぬ事とはいえ、大変失礼いたしました。マルクス王太子殿下」
「はっ?!あの、いかがなさいましたか?国王陛下」

マルクスが状況を飲み込めないでいると、シルベーヌ国王はもう一度書簡に目を落とす。

「あなたのお父上であるカルディナ国王が、この書簡にしたためていらっしゃるのだよ。マルクス殿は正真正銘、カルディナ王国の王太子殿下でいらっしゃると」

えっ?!と、マルクスは驚きを隠せない。

「更には、戦いの現場を熟知した国境警備隊の連隊長だけではなく、事実上の軍事最高司令官でもあると。カルディナ国王は、条約締結における全てをあなたに一任する、そう書かれている」
「えっ…、まさかそんな」
「あなたが今まで身元を明かさず我々の為に尽力してくれたこと、そして今、国王陛下が私にこの事実を伝えてくださったこと。私はこれからも心に留めて感謝し続けます。ありがとう、マルクス王太子殿下」

再び頭を下げる国王に、マルクスもただ深く頭を下げた。
< 87 / 114 >

この作品をシェア

pagetop