野獣と噂の王太子と偽りの妃
「うん!美味しい。はあ、幸せを感じる」
「本当ですね。身も心も安らぎます」
屈託のない笑顔で食後のデザートを味わうマルクスとサミュエルに、プリムローズもレイチェルと顔を見合わせて笑顔になる。
二週間ぶりに揃った四人は、心からの安堵と喜びを感じていた。
(やっぱり私はいつまでも、この四人で暮らしていきたい。たとえどこに住むことになろうとも)
プリムローズは皆の笑顔を見ながら、改めて強く心に決めた。
一方、マルクスもこの屋敷に帰る前に宮殿に立ち寄り、国王にシルベーヌでの報告を簡単に済ませた際、国王から宮殿に住むよう打診されていた。
食事を終えるとマルクスはプリムローズをソファに促す。
「長い間留守にしてすまなかった。大丈夫だったか?」
「はい。国王陛下も様子を見に来てくださいましたし、レイチェルと毎日穏やかに過ごしておりました。けれど、夜ベッドに入ると少し寂しくて…」
照れたように小さく微笑むプリムローズを、マルクスは優しく抱きしめる。
「もう二度とそなたに寂しい思いはさせない。だがプリムローズ。そなたに相談があるのだ」
「はい。何でしょうか?」
「シルベーヌ国王と協議して決まったことを、先程父上にも伝えた。シルベーヌとカルディナはこれから友好条約を結ぶ。いずれは、カルディナの国民がシルベーヌに移住することも見越している」
え?と、思わぬ話の内容に驚くプリムローズに、マルクスは詳しく話して聞かせた。
「シルベーヌ国王が今は使っていない古い宮殿を改装し、俺の活動拠点として使わせてくれることになった。ここからは馬で一時間ほどで着く。俺は移住の先陣を切るために、頻繁にそこに足を運び、カルディナとシルベーヌの架け橋となるよう尽力していく。日中はここを留守にすることが増えるが、必ずその日のうちに帰ってくると約束する。もうそなたに、寂しい夜を過ごさせたりはしない」
「マルクス様…」
プリムローズはうつむいて考えを巡らせる。
(国王陛下は、宮殿に住まないかと誘ってくださっている。そして今後もマルクス様は、頻繁にシルベーヌに足を運んでお忙しい毎日を過ごされる。私は…?どうすればいい?何をすべき?)
「プリムローズ、どうかしたか?」
マルクスに心配そうに顔を覗き込まれて、プリムローズは慌てて顔を上げた。
「いいえ。マルクス様、やっとお会いできて本当に嬉しいです」
「俺もだ、プリムローズ」
離れている間ずっと焦がれていたプリムローズの可憐な笑顔に、マルクスは心の底から愛しさが込み上げてきた。
そっとプリムローズの頬に手を添えて上を向かせると、潤んだ瞳に微笑みかけてから、マルクスは深くプリムローズに口づける。
ジンと胸の奥が痺れて痛み、マルクスはその切なさにキュッと眉を寄せると、更に強くプリムローズを抱きしめた。
「プリムローズ、俺の幸せはここにある。そなたの存在こそが俺の幸せだ」
「マルクス様。わたくしのあるべき場所もここです。あなたのそばがわたくしの生きる道なのです」
「プリムローズ…」
マルクスの腕の中で、プリムローズは身体中に幸せと喜びが広がるのを感じていた。
こんなにも愛され、温かい胸に抱かれて、苦しいほどの幸福に涙が込み上げてくる。
(もうひと時も離れたくない。何があっても、私はマルクス様のそばにいたい)
その想いに、プリムローズは意を決してマルクスの胸からそっと身を起こした。
プリムローズ?と、マルクスが怪訝そうに尋ねる。
「本当ですね。身も心も安らぎます」
屈託のない笑顔で食後のデザートを味わうマルクスとサミュエルに、プリムローズもレイチェルと顔を見合わせて笑顔になる。
二週間ぶりに揃った四人は、心からの安堵と喜びを感じていた。
(やっぱり私はいつまでも、この四人で暮らしていきたい。たとえどこに住むことになろうとも)
プリムローズは皆の笑顔を見ながら、改めて強く心に決めた。
一方、マルクスもこの屋敷に帰る前に宮殿に立ち寄り、国王にシルベーヌでの報告を簡単に済ませた際、国王から宮殿に住むよう打診されていた。
食事を終えるとマルクスはプリムローズをソファに促す。
「長い間留守にしてすまなかった。大丈夫だったか?」
「はい。国王陛下も様子を見に来てくださいましたし、レイチェルと毎日穏やかに過ごしておりました。けれど、夜ベッドに入ると少し寂しくて…」
照れたように小さく微笑むプリムローズを、マルクスは優しく抱きしめる。
「もう二度とそなたに寂しい思いはさせない。だがプリムローズ。そなたに相談があるのだ」
「はい。何でしょうか?」
「シルベーヌ国王と協議して決まったことを、先程父上にも伝えた。シルベーヌとカルディナはこれから友好条約を結ぶ。いずれは、カルディナの国民がシルベーヌに移住することも見越している」
え?と、思わぬ話の内容に驚くプリムローズに、マルクスは詳しく話して聞かせた。
「シルベーヌ国王が今は使っていない古い宮殿を改装し、俺の活動拠点として使わせてくれることになった。ここからは馬で一時間ほどで着く。俺は移住の先陣を切るために、頻繁にそこに足を運び、カルディナとシルベーヌの架け橋となるよう尽力していく。日中はここを留守にすることが増えるが、必ずその日のうちに帰ってくると約束する。もうそなたに、寂しい夜を過ごさせたりはしない」
「マルクス様…」
プリムローズはうつむいて考えを巡らせる。
(国王陛下は、宮殿に住まないかと誘ってくださっている。そして今後もマルクス様は、頻繁にシルベーヌに足を運んでお忙しい毎日を過ごされる。私は…?どうすればいい?何をすべき?)
「プリムローズ、どうかしたか?」
マルクスに心配そうに顔を覗き込まれて、プリムローズは慌てて顔を上げた。
「いいえ。マルクス様、やっとお会いできて本当に嬉しいです」
「俺もだ、プリムローズ」
離れている間ずっと焦がれていたプリムローズの可憐な笑顔に、マルクスは心の底から愛しさが込み上げてきた。
そっとプリムローズの頬に手を添えて上を向かせると、潤んだ瞳に微笑みかけてから、マルクスは深くプリムローズに口づける。
ジンと胸の奥が痺れて痛み、マルクスはその切なさにキュッと眉を寄せると、更に強くプリムローズを抱きしめた。
「プリムローズ、俺の幸せはここにある。そなたの存在こそが俺の幸せだ」
「マルクス様。わたくしのあるべき場所もここです。あなたのそばがわたくしの生きる道なのです」
「プリムローズ…」
マルクスの腕の中で、プリムローズは身体中に幸せと喜びが広がるのを感じていた。
こんなにも愛され、温かい胸に抱かれて、苦しいほどの幸福に涙が込み上げてくる。
(もうひと時も離れたくない。何があっても、私はマルクス様のそばにいたい)
その想いに、プリムローズは意を決してマルクスの胸からそっと身を起こした。
プリムローズ?と、マルクスが怪訝そうに尋ねる。