野獣と噂の王太子と偽りの妃
「マルクス様。わたくしはもう二度と、あなたと離れたくはありません。マルクス様がどこにいても、どんな時も、わたくしはあなたのそばであなたを支えていきたいのです。どうか、わたくしをそばに置いてください」
「プリムローズ…。もちろん俺もそれを願っている。たとえどんなに忙しくても、必ず夜にはそなたのもとに帰ってくる。もう二度とそなたを一人寂しく眠らせたりはしないと誓う」
真剣に語りかけるマルクスに、プリムローズは首を振る。
「プリムローズ?一体…」
マルクスが不安そうに見つめると、プリムローズはしっかりと顔を上げて告げた。
「わたくしはどんな時もあなたのそばにいます。たとえあなたがシルベーヌに行かれたとしても」
え?と、マルクスはプリムローズの意図を図りかねて眉根を寄せる。
「プリムローズ、それはどういう?」
「マルクス様は、カルディナとシルベーヌの為にこれからも尽力されるのですよね?ならば、わたくしもそばでお支えいたします。平和を願うあなたを、誰よりも近くで支え続けます」
「ああ。これまでだって、いつもそなたの存在が俺を支えてくれている。そなたが待ってくれているから、俺はどんなこともやり遂げてみせると思えるんだ」
「ですがわたくしはもう、待つのはまっぴらです」
えっ!とマルクスは目を見開いて息を呑む。
いきなりプリムローズに背を向けられた気がして、頭を殴られたようなショックにストンと腕の力が抜けた。
呆然としていると、プリムローズがきっぱりと言葉を続ける。
「マルクス様。あなたのお帰りを待つのはもう嫌です。わたくしも一緒にまいります。シルベーヌに拠点を置かれるのなら、わたくしもそこで暮らします」
ハッとして、マルクスは視線を上げた。
プリムローズは決意に満ちた瞳で頷く。
「そなたが俺と、シルベーヌで、暮らす?」
「ええ。カルディナ国民の移住の先陣を、あなたが切るとおっしゃいましたよね?でしたらわたくしも一緒です。あなたと共に、シルベーヌで暮らします」
「プリムローズ…」
マルクスは信じられない思いで胸が打ち震えた。
自分の考えは、シルベーヌ国王も、父であるカルディナ国王にも驚かれたというのに。
プリムローズにはまた寂しい思いをさせてしまうと、どこか気が引けていたというのに。
なるべく悲しませないようにとあれこれ考え、必ず夜には屋敷に帰ると決めたというのに。
そんな自分の考えを、プリムローズは軽く飛び越えて決断してくれた。
(シルベーヌで暮らすだと…?俺ですら躊躇してしまったのに、こんなにもきっぱりと言い切るなんて。参った)
マルクスは、ふっと笑みをもらす。
「マルクス様?」
首を傾げるプリムローズを、マルクスは思わず両手で胸に抱き寄せた。
「なんて強いのだろう、そなたは。可愛くて可憐で、ただただ守ってやるべき存在だと思っていたのに。どうしてこんなにも俺を奮い立たせてくれる?どこにそんな強さを秘めていた?」
プリムローズはじっと耳を傾けたあと、ふふっと微笑んだ。
「マルクス様と共にいるからです。あなたのそばなら、わたくしはどんなことにも立ち向かえる勇気をもらえるのです」
「プリムローズ…」
不覚にも込み上げる涙を必死でこらえ、マルクスはプリムローズを更に強く抱きしめた。
「そなたは俺のたった一人の女神だ。幸運と幸せの女神。プリムローズ、ありがとう」
「マルクス様…」
大きくて温かいマルクスの胸に頬を寄せ、プリムローズもマルクスの背に腕を回す。
愛しさ、感謝、幸せ、心強さ…
湧き上がる様々な感情に身を任せ、二人はいつまでも互いを抱きしめ合っていた。
「プリムローズ…。もちろん俺もそれを願っている。たとえどんなに忙しくても、必ず夜にはそなたのもとに帰ってくる。もう二度とそなたを一人寂しく眠らせたりはしないと誓う」
真剣に語りかけるマルクスに、プリムローズは首を振る。
「プリムローズ?一体…」
マルクスが不安そうに見つめると、プリムローズはしっかりと顔を上げて告げた。
「わたくしはどんな時もあなたのそばにいます。たとえあなたがシルベーヌに行かれたとしても」
え?と、マルクスはプリムローズの意図を図りかねて眉根を寄せる。
「プリムローズ、それはどういう?」
「マルクス様は、カルディナとシルベーヌの為にこれからも尽力されるのですよね?ならば、わたくしもそばでお支えいたします。平和を願うあなたを、誰よりも近くで支え続けます」
「ああ。これまでだって、いつもそなたの存在が俺を支えてくれている。そなたが待ってくれているから、俺はどんなこともやり遂げてみせると思えるんだ」
「ですがわたくしはもう、待つのはまっぴらです」
えっ!とマルクスは目を見開いて息を呑む。
いきなりプリムローズに背を向けられた気がして、頭を殴られたようなショックにストンと腕の力が抜けた。
呆然としていると、プリムローズがきっぱりと言葉を続ける。
「マルクス様。あなたのお帰りを待つのはもう嫌です。わたくしも一緒にまいります。シルベーヌに拠点を置かれるのなら、わたくしもそこで暮らします」
ハッとして、マルクスは視線を上げた。
プリムローズは決意に満ちた瞳で頷く。
「そなたが俺と、シルベーヌで、暮らす?」
「ええ。カルディナ国民の移住の先陣を、あなたが切るとおっしゃいましたよね?でしたらわたくしも一緒です。あなたと共に、シルベーヌで暮らします」
「プリムローズ…」
マルクスは信じられない思いで胸が打ち震えた。
自分の考えは、シルベーヌ国王も、父であるカルディナ国王にも驚かれたというのに。
プリムローズにはまた寂しい思いをさせてしまうと、どこか気が引けていたというのに。
なるべく悲しませないようにとあれこれ考え、必ず夜には屋敷に帰ると決めたというのに。
そんな自分の考えを、プリムローズは軽く飛び越えて決断してくれた。
(シルベーヌで暮らすだと…?俺ですら躊躇してしまったのに、こんなにもきっぱりと言い切るなんて。参った)
マルクスは、ふっと笑みをもらす。
「マルクス様?」
首を傾げるプリムローズを、マルクスは思わず両手で胸に抱き寄せた。
「なんて強いのだろう、そなたは。可愛くて可憐で、ただただ守ってやるべき存在だと思っていたのに。どうしてこんなにも俺を奮い立たせてくれる?どこにそんな強さを秘めていた?」
プリムローズはじっと耳を傾けたあと、ふふっと微笑んだ。
「マルクス様と共にいるからです。あなたのそばなら、わたくしはどんなことにも立ち向かえる勇気をもらえるのです」
「プリムローズ…」
不覚にも込み上げる涙を必死でこらえ、マルクスはプリムローズを更に強く抱きしめた。
「そなたは俺のたった一人の女神だ。幸運と幸せの女神。プリムローズ、ありがとう」
「マルクス様…」
大きくて温かいマルクスの胸に頬を寄せ、プリムローズもマルクスの背に腕を回す。
愛しさ、感謝、幸せ、心強さ…
湧き上がる様々な感情に身を任せ、二人はいつまでも互いを抱きしめ合っていた。