野獣と噂の王太子と偽りの妃
厳かな雰囲気の中、プリムローズはこれまでの道のりを振り返りながら、一歩一歩深紅のバージンロードを踏みしめる。
母を知らずに育ち、継母と異母妹に遠慮しながら過ごした日々。
自分がいない方が皆の為だと腹をくくり、恐ろしいと噂の王太子のもとへと向かったあの日。
冷たくあしらわれながらも、ケガをしたマルクスを看病し、いつの間にか心を通わせていた。
危険な目に遭ったり、マルクスに遠ざけられたりしながらも、どうしても諦める気にはなれなかった。
今思うとその時にはもう、マルクスのいない人生など考えられなかったのかもしれない。
そんなことを考えつつ、数少ない列席者の近くまで来た時、エステルの戸惑った声が聞こえてきた。
「え、ほんとにプリムローズ?すんごい綺麗なんだけど!それに王太子様も野獣じゃないし。しかも国王陛下のお隣にいらっしゃるのも王太子様?どういうこと?」
プリムローズは思わずクスッと笑う。
(エステルったら。王太子様が野獣みたいだって噂、まだ信じてたのね。じゃあ今日も、正装した野獣を想像してたのかしら?)
頭の中に、二本足で立っているタキシード姿の野獣が思い浮かび、プリムローズはまた小さく笑みをもらす。
そっと視線を上げると、祭壇の前には野獣どころか、おとぎ話から抜け出した王子様のようなマルクスが、優しくプリムローズを見守っていた。
(マルクス様、なんてかっこいいのかしら…)
ロイヤルブルーのロングジャケットの胸元には王家の紋章。
両肩にも黄金の肩章と飾り。
腰のサッシュベルトは高い位置にあり、マルクスの足の長さを印象づけている。
余りに高貴で凛々しいマルクスの姿に、プリムローズは緊張して視線を落とす。
ゆっくりと歩を進めていた父とプリムローズは、遂にマルクスのもとにたどり着いた。
深々と頭を下げた父が、プリムローズの手をマルクスに託す。
マルクスはしっかりとプリムローズの手を取り、優しく微笑んだ。
「プリムローズ、とても綺麗だ」
「ありがとうございます。マルクス様も、とても素敵です」
視線を落としたまま顔を赤くするプリムローズに、マルクスは目を細める。
「プリムローズ。見惚れるほど美しく、初めて恋に落ちたように初々しくて可愛いな」
途端にプリムローズの頬は更に真っ赤になった。
「プリムローズ…、可愛過ぎる。その辺にしておいてくれ。でないと我慢できなくなる」
「え?何の我慢ですか?」
「そなたをここで押し倒したくなる」
ひえっ!とプリムローズは身をすくめた。
「マルクス様、その、式の最中ですので」
「ああ、そうだな」
慌てて真顔に戻って正面に向き直り、二人はゆっくりと祭壇を上った。
母を知らずに育ち、継母と異母妹に遠慮しながら過ごした日々。
自分がいない方が皆の為だと腹をくくり、恐ろしいと噂の王太子のもとへと向かったあの日。
冷たくあしらわれながらも、ケガをしたマルクスを看病し、いつの間にか心を通わせていた。
危険な目に遭ったり、マルクスに遠ざけられたりしながらも、どうしても諦める気にはなれなかった。
今思うとその時にはもう、マルクスのいない人生など考えられなかったのかもしれない。
そんなことを考えつつ、数少ない列席者の近くまで来た時、エステルの戸惑った声が聞こえてきた。
「え、ほんとにプリムローズ?すんごい綺麗なんだけど!それに王太子様も野獣じゃないし。しかも国王陛下のお隣にいらっしゃるのも王太子様?どういうこと?」
プリムローズは思わずクスッと笑う。
(エステルったら。王太子様が野獣みたいだって噂、まだ信じてたのね。じゃあ今日も、正装した野獣を想像してたのかしら?)
頭の中に、二本足で立っているタキシード姿の野獣が思い浮かび、プリムローズはまた小さく笑みをもらす。
そっと視線を上げると、祭壇の前には野獣どころか、おとぎ話から抜け出した王子様のようなマルクスが、優しくプリムローズを見守っていた。
(マルクス様、なんてかっこいいのかしら…)
ロイヤルブルーのロングジャケットの胸元には王家の紋章。
両肩にも黄金の肩章と飾り。
腰のサッシュベルトは高い位置にあり、マルクスの足の長さを印象づけている。
余りに高貴で凛々しいマルクスの姿に、プリムローズは緊張して視線を落とす。
ゆっくりと歩を進めていた父とプリムローズは、遂にマルクスのもとにたどり着いた。
深々と頭を下げた父が、プリムローズの手をマルクスに託す。
マルクスはしっかりとプリムローズの手を取り、優しく微笑んだ。
「プリムローズ、とても綺麗だ」
「ありがとうございます。マルクス様も、とても素敵です」
視線を落としたまま顔を赤くするプリムローズに、マルクスは目を細める。
「プリムローズ。見惚れるほど美しく、初めて恋に落ちたように初々しくて可愛いな」
途端にプリムローズの頬は更に真っ赤になった。
「プリムローズ…、可愛過ぎる。その辺にしておいてくれ。でないと我慢できなくなる」
「え?何の我慢ですか?」
「そなたをここで押し倒したくなる」
ひえっ!とプリムローズは身をすくめた。
「マルクス様、その、式の最中ですので」
「ああ、そうだな」
慌てて真顔に戻って正面に向き直り、二人はゆっくりと祭壇を上った。