桐生さんのお世話係?
騒がれる前に出る。



「はい」



玄関のドアを開けると、スーツをきっちり着た男の人が一人……と目深にキャップを被った(こっちはスーツを着ていない)今どきの若者風の男の人が一人居た。



なんだろう……。



スーツの人より、キャップの人の方が怖い……。



キャップのせいで表情は全く見えないんだけど。




「娘さんかな?お母さん居る?」




ガッとドアを掴まれ、聞かれる。




逃げないから大丈夫なのに。




「どうぞ」




私は自らドアを全開にし、男の人達を家の中へと招く。




「え?」




スーツの人が驚いて、咄嗟にもう一人の人を見た。




ん?



スーツの人の方が年上っぽいけど、立場的にはキャップの人の方が上……なのかな?




キャップの人が少しだけ顔を上げる。



キャップのツバの下から見える鋭い眼光。




っっ。



そのあまりの鋭さに息を飲む。



ビビる、ビビるな私。



これからするお願いを、なんとしても聞いてもらわないといけないのだ。



目を逸らすことなく見ていると、キャップの人が小さく頷いた。




「じゃあ、少しだけ邪魔するぜ」




スーツの人が言う。




ほっ。



第一関門突破のようだ。




二人が家に上がる。




「今、お茶を淹れますから」



「いや、お構いなく」




と言われてももうお湯も沸かしてあるし。




「お嬢さん、お母さんは」



「……どうぞ」




ものの一分も掛からず二人の前へお茶を置く。



私も二人の前に座り大きく息を吸って、二人を見た。



そんな私の様子に、口を開きかけたスーツの人が何も言わず口を閉じた。




「「……」」



「母は昨日、私達を捨てて出ていきました」


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