桐生さんのお世話係?
「良いのか?」




桐生さんが問いかけてくる。




「……」



「引き受けるのは良いが、もう二度と会えないぞ。姉だと告げることも許されない。それでも」



「っっ」




視界が滲み、歯を食いしばる。



嫌だよ。



嫌だ。



私は珊瑚のお姉ちゃんなんだ。



でも




「よろ……しくお願い……します」




それでも




「あの子に良き両親を」




もう一度、深く深く頭を下げる。




「……」



「桐生さん」




丹波さんが桐生さんを呼ぶ。



けれど私は話しを続ける。




「申し訳ないのですが養子の件でお金がかかるのであれば借金に加算してください」



「わかった。お前のその覚悟に免じて子供を大切にする夫婦を見つけてやる」



「!!ありがとうございます!!」




良かった。



良かった、これで珊瑚のことは安心だ。




なんでだろう。



会ったばかりなのに、桐生さんは信じられる気がした。




キッパリと言ってくれたから……かな。

私にほんの少しの希望も与えず。


もう珊瑚とは会えない……と。




「お前……そんな……妹の幸せばかり……。お前は」




丹波さんが声を詰まらせながら話すのだけど。



妹の幸せばかり?



いやいやいや




「??私も幸せになりますよ?」



「は?」



「え?」




二人がキョトンとする。




え?なんで




「借金返し終えたら自由になれるんですよね?」



「ああ」



桐生さんが頷いてくれる。



うん、なら




「だが、額が額だ。何十年もかかるだろう」



「はい」




わかってる。



でも何十年かかっても




「その時がきたら、私は私の幸せを求めてまた頑張りますよ」




あの女の子どもに生まれたのは最悪だったけど、これは私の人生だ。



絶対に諦めたりはしない。




そう言って、私は笑った
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