『ブレッド』  ~ニューヨークとフィレンツェを舞台にした語学留学生と女性薬剤師の物語~【新編集版】
 あっという間に8月になった。
 ニューヨークはうだるような暑さになり、35度近い日が続いていた。
 もちろん日本でも暑い日は経験していたが、それとはまた違って酷く感じたので、「ルチオさんの故郷は過ごしやすいですか?」と救いを求めたが、「そうでもないよ。ここと変わらないかな」と意外な返事が返ってきた。
 イタリアの北部と聞いていたので涼しい風が吹いている様を想像していたが、日中は35度近くなることも珍しくないらしい。

「でも、夜になるとぐっと気温が下がるから、ここよりは過ごしやすいかもしれないね」

 15度前後まで気温が低下するので、夜外出する時はジャケットが必要だという。

「まあユズルやアンドレアは若いから、Tシャツの上に長袖のシャツを羽織っておけば十分かもしれないけどね」

 弦は自分が持って行く荷物を既にまとめていたが、ルチオの勧めに従って長袖のワイシャツと、念のために薄手のジャケットを加えることにした。

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