『ブレッド』 ~ニューヨークとフィレンツェを舞台にした語学留学生と女性薬剤師の物語~【新編集版】
開店まであと10分という頃にフローラが顔を見せた。
「どうだった?」
弦にわかるようにと気を使ったのか、英語でウェスタに話しかけた。
「最高よ」
ウェスタも英語で答えた。
それで照れ臭くなったが、「召し上がれ」とウェスタがトレイに乗ったチャバッタを差し出すと、口に入れたフローラから「おいしい」と日本語が出た。
やったー!
2人に見えないように拳を握ると、続いて口にしたウェスタが指先を唇に当ててキスをして、天井に向けて指を開いた。おいしさを表すジェスチャーのようだった。
褒められて天にも昇るような気持ちになったが、それを隠して貴重な経験ができたことへの感謝を伝えた。
すると、「こちらこそ。とても楽しかったわ」と英語で応えるウェスタにフローラが何やら耳打ちをした。
即座にウェスタが頷いたので、なんだろうと思っていると、「ウェスタが夕食にご招待したいと申していますが、いかがですか」とフローラが笑みを浮かべた。アルバイト料の代わりだという。
「いえ、こちらこそ御礼をしなければいけないのに……」
招待なんてとんでもないと手を横に振ると、急にウェスタが鋭い目付きになってなにやらイタリア語でまくし立て始めた。
するとフローラもウェスタの真似をして腕を組んで睨みつける目になった。
「年上の女性の誘いを断るものじゃないわよ」
日本語だったが、美しい顔から発せられた凄みのある声に弦は声をなくした。
しかし、ウェスタが笑うとフローラも笑い出して元の美しい顔に戻ったので、やっと気持ちがわかって、「ありがとうございます」という言葉を素直に出すことができた。
「どうだった?」
弦にわかるようにと気を使ったのか、英語でウェスタに話しかけた。
「最高よ」
ウェスタも英語で答えた。
それで照れ臭くなったが、「召し上がれ」とウェスタがトレイに乗ったチャバッタを差し出すと、口に入れたフローラから「おいしい」と日本語が出た。
やったー!
2人に見えないように拳を握ると、続いて口にしたウェスタが指先を唇に当ててキスをして、天井に向けて指を開いた。おいしさを表すジェスチャーのようだった。
褒められて天にも昇るような気持ちになったが、それを隠して貴重な経験ができたことへの感謝を伝えた。
すると、「こちらこそ。とても楽しかったわ」と英語で応えるウェスタにフローラが何やら耳打ちをした。
即座にウェスタが頷いたので、なんだろうと思っていると、「ウェスタが夕食にご招待したいと申していますが、いかがですか」とフローラが笑みを浮かべた。アルバイト料の代わりだという。
「いえ、こちらこそ御礼をしなければいけないのに……」
招待なんてとんでもないと手を横に振ると、急にウェスタが鋭い目付きになってなにやらイタリア語でまくし立て始めた。
するとフローラもウェスタの真似をして腕を組んで睨みつける目になった。
「年上の女性の誘いを断るものじゃないわよ」
日本語だったが、美しい顔から発せられた凄みのある声に弦は声をなくした。
しかし、ウェスタが笑うとフローラも笑い出して元の美しい顔に戻ったので、やっと気持ちがわかって、「ありがとうございます」という言葉を素直に出すことができた。