🍞 ブレッド 🍞 ~ニューヨークとフィレンツェを舞台にした語学留学生と女性薬剤師の物語~【新編集版】
 食事が終わると、ウェスタがバッグからカードを差し出した。
 受け取って見てみると、Forno de` Mediciの住所と電話番号とメールアドレスが記載されていた。

「いつでも連絡してね」

 もしアドバイスできることがあればどんなことでも協力するからと支援を口にしてくれたので、「本当にありがとうございました。厨房に入らせていただいた上にこんなにも美味しい料理をご馳走になって」と礼を言ったが、そこで詰まってしまった。
 次の言葉が出てこなかった。
 次いつ会えるかわからない状態で別れるのは辛すぎることだった。
 しかし、いつまでも黙っているわけにはいかないので、「本当にありがとうございました」と同じ言葉を繰り返して深く頭を下げた。

< 125 / 169 >

この作品をシェア

pagetop