『ブレッド』  ~ニューヨークとフィレンツェを舞台にした留学青年と女性薬剤師の物語~【新編集版】
 女はすぐに草原に走り戻り、両手いっぱいにして住まいに向かった。
 それを何度も繰り返して持ち帰った実をすべて潰し始めた。
 しかし、尖った石ではうまく潰せなかった。
 少しずつしか潰せないし、狙いをつけることも難しかった。

 そこで女は考えた。

 すると、尖っていない石で潰した方がいいのではないかと思いついた。
 辺りを見回すと、長方形の石が目に入った。
 それを握って実の上から叩きつけると、尖った石より多くの実が潰せた。
 思った通りだった。
 しかし、叩き潰す度に実が周囲に散ったのでいちいち拾わなければならなかった。

 面倒くさくなった女は他の方法を考えた。
 平らな石を持ったまま考えた。
 すると、また閃いた。
 ゴリゴリすればいいのではないかと。
 すぐにやってみた。
 うまくいった。
 飛び散ることなくきれいにすり潰すことができた。
 思わず声が出た。
 嬉しくて仕方なかった。
 
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