私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
「柊真さん……」

利夏さんは、圧倒されて一歩後ろに引く。

「お願いだから、俺の大事な人に手を出さないでくれ。」

そう言うと利夏さんは、バッグを持った。

「……私だって、本当の恋を知りたかったわよ。」

利夏さんが、胸の前でバッグをぎゅっと抱きしめる。

「柊真さんだったら、本当の恋を教えてくれると思ってた。」

きっと、利夏さんは親の言う事を聞いて、恋に恋してたのかもしれない。

「謝らないわよ。私を振った代償は大きいからね。」

「あの、利夏さん。」

「何?」

利夏さん、怒ってる。

絶対、柊真は取引の事、気にしてる。

私は利夏さんに、泣きながら頭を下げた。

「取引の件、どうかこのまま続けさせて下さい。」

「恭香、それは……」

「お願いです。どうか、結婚と取引は、一緒にしないでください。」
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