私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
私のせいで、大きな取引先を失うなんて。

「お願いです。」

私はその場にひざまづいた。

「恭香、おまえがそれをしなくてもいい。」

柊真は私の腕を引き、立たせようとしている。

「でもっ!」

「恭香っ!」

「あなたの気持ち一つで、何百人という社員が仕事を失う事だってあるんです!」

今回の藤高コーポレーションの取引、無くなれば絶対損害が大きいはず。

「あなただって、社長夫人として育てられたなら、その事理解できますよね。」

たぶん、涙で化粧ボロボロだ。

「見くびらないで。」

利夏さんは、私を睨んでいる。

「私はそこまで愚かではありません。」

「利夏さん。」

「それに、取引を止めれば損害が大きいのは、藤高の方です。」

「えっ……」

利夏さんは、うつむいて悔しがっていた。
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