私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
「結城……」

「1課の課長をしている結城だ。」

結城は一枚の名刺を、住前君に渡した。

「結城……柊真さん……」

その名前を読んだ時、住前君はニヤッと笑った。

「あなたがかの有名な御曹司ですか。」

「だったら何なんだ?」

住前君は、さっきの赤丸を付けた企画書を、結城に見せた。

「結城課長でしたら、分かりますよね。この赤丸付けた部分。」

結城は、その企画書を手に取り、じーっと眺めた。

「……ないな。」

「えっ⁉」

「これでは、先方の希望なんか一つも叶えていないじゃないか。」

「嘘だっ!」

結城は住前君の前で、今度は青丸で次々と訂正していった。

「ここはこのまま、ここで予算を削る。ここは代替え案、ここで相手の希望を100%叶える。」

そして出てきた予算は、1,000万オーバーだ。
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