私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
「これだけの中身で、1,000万オーバーだけ。」

「この予算なら、銀行の融資が通りやすい。自費で全額賄うよりも楽になる。」

「さすが一課の課長ですね。」

そして結城は、住前君の席を借りると、企画書を訂正しその場で私に見せた。

「俺が承認してもいいか?」

「えっ、ええ……」

結城が承認すると、住前君は頭を下げた。

「ありがとうございます。」

「予算のオーバー分、しっかり交渉してくれ。営業部のエース。」

結城が住前君の肩をポンと叩くと、立ち上がり私の背中を押した。

「行くぞ。浅見。」

「……うん。」

私は結城の後を、床を見つめながら歩いた。

どうして、私はもっと代替え案を提供しなかったのだろう。

なぜ否定ばかりして、もっと相手を思いやれなかったのだろう。
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