私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
「どうかしたか?」

「それが……」

結城の顔を見れない。

でも、これはただのお礼なんだし。いいよね。

「……住前君に、お礼に食事奢ろうと思って。」

「はあ?」

やっぱり驚いている。

「そんな必要ないだろ。」

「とは言っても、約束したから。」

そうよ。これは約束。破る訳にはいかない。

「おまえ、大丈夫か?」

「何が?」

「そんな事やってたら、迷惑かける度に奢る事になるぞ。」

まるでこれからも、営業部迷惑かけるような言い草。

「大丈夫よ。」

私は上着とバッグを持つと、結城と一緒にオフィスを出た。

ドアを閉めると、廊下に人の影を見つけた。

「浅見課長。」

「住前君。もしかして……帰らないで待っててくれたの?」

「はい。」

その可愛さに、胸がキュンとした。
< 39 / 160 >

この作品をシェア

pagetop