私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
「へえ……大人の余裕ね。」

そうよ。まだやる気満々の若い盛りとは、違うんだから。

「ところで、結城はどうなの?若い婚約者の方とは、順調に愛を育んでいるの?」

「ああ……」

思い出したかのように、言葉を濁す。

「忘れてたわ。」

「はあ?」

婚約者を忘れるって、どういう事⁉

「かわいそう。婚約者に放っておかれるなんて。」

「あっちだって、連絡してこないんだからお互い愛情がないんだろ。」

私は手が止まった。

「愛情がないのに、結婚するの?」

「政略結婚なんて、そんなものだよ。」

何だか相手もかわいそうだし。結城だって、そんな結婚して何がいいんだか。

「……私は、愛し愛されての結婚がいいな。」

「理想はな。」

でもそうは言ってられない30代女子。
< 62 / 160 >

この作品をシェア

pagetop