私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
池崎さんの優しさが、逆に悲しかった。

分かる。もう池崎さん50歳だし。夜が弱くなるのは分かる。

でも、私まだ38歳だよ?これでいいの?

私はその夜、眠れない夜を過ごした。


翌日は、やっぱり寝不足だった。

隣の結城は、昨夜のデートを知っているから、何も言って来ない。

ただ眠い。ひたすら眠い。

仕事に集中したいのに。昨夜の事を忘れたいのに。


「浅見。もう今日は帰れ。」

「えっ?」

結城が私の肩を叩いた。

「顔、真っ青だぞ。帰って休め。」

「大丈夫。ただ眠いだけだから。」

すると結城は、私を片手で立たせた。

「無理するな。」

そして私のバッグとジャケットを持つ。

「行くぞ。」

そして腕を掴み、私を連れて行く。

「……結城、皆見てる。」
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