私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
「眠ってろ。家まで送るから。」

「私の家、知ってるの?」

「前に一度、送っていっただろ。」

さすが結城。一回で覚えるんだ。

そして彼は、運転席に乗ると車を走らせた。

私が眠りやすいようにと、スピードを出さずに。


「結城……」

「ん?」

「ありがとう。迷惑かけてごめん。」

「迷惑だなんて、思ってないよ。」

胸が熱くなる。

池崎さんの優しさは、大人の余裕でスマートだけど、結城の優しさは情熱的で、泣けてくる。

いつの間にか涙がボロボロ零れていた。

涙を拭うと、結城が右手を握ってくれた。

「こうすると、安心するか?」

「うん。」

結城がチラッと、私を見る。

その視線がくすぐったい。

「もうすぐで、家に着くよ。」

私は結城の横顔を、見つめた。
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