私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
目鼻立ちが整った顔。どうしてこいつ、今も独身なんだろう。

女にモテると思うのに。

「ほら、着いたぞ。」

ふいに顔を覗かれて、ドキンとした。

「起き上がれるか?」

「うん。」

結城の手が離れ、彼は車を降りるとゆっくりと歩いて来て、助手席のドアを開けてくれた。

「ほら。」

まるで結城の彼女みたい。

私が車を降りると、彼は今度上着とバッグを持つ。

至れり尽くせりだ。

「ありがとう。もう大丈夫だから。」

「いいよ、部屋まで送る。」

彼氏でもないのに、家まで送るだなんて。

「安心しろ。体調の悪いおまえを襲ったりしないって。」

結城の優しさに、どこまで甘えていいのかわからない。

私は結城を、自分の家まで案内した。

玄関まで着くと、鍵を開けた。
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