私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
「そんな奴、止めろ。」

結城の吐息が耳元に聞こえる。

「でも、池崎さんを逃したら、私結婚できない。」

「俺が結婚するから。」

あまりの驚きに、体がビクッとなる。

「俺がおまえの結婚相手になる。」

ゆっくりと振り返って、結城を見た。

真剣な表情をした結城がそこにいる。


「……できるわけないでしょ。」

「なんでだよ。お互い独身だって。」

「婚約者はどうするの?」

「婚約は破棄する。」

「本気なの?」

そして結城は私の髪をすくって、自分の唇に当てた。

「本気なの?」

「本気だ。浅見恭香。俺の妻になれ。」

その真剣な瞳に吸い込まれそうになる。

「結城……」

ゆっくりと近づいてくる唇。だけど私は受け止められなかった。

「今更、あんたと恋愛なんて……」

これは何?同情?それとも……愛なの?
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