私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
私は肩に置かれている結城の手を握った。

「今日、結城が傍にいてくれて、よかった。」

私達は見つめ合った。

ゆっくりと顔が近づいて、結城と唇が重なった。

柔らかい唇。角度も変えて何度も重なる。

どちらかが離れると、また追いかける唇。

こんなにも何度も何度も、唇を重ねたキスは初めて。


映画が終わり、私達は席を立った。

「あー、楽しかった。」

私は結城の腕にしがみついた。

「この後……どうする?」

「ああ、実はこの後、親父と会う事になって。」

「社長と?」

「たぶん、結婚の話だと思う。」

全身がドクンと脈打った。

「そっか……」

結婚。結城には婚約者がいる。

お父さんが望むような、お嬢様。

私はそっと、結城から離れた。

「じゃあ、恋人ごっこは終わりだね。」
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