私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした
結城は、何も言い返せなかった。

「仕事に邁進しろ。その為に早く家庭を持つんだ。それだけだ。」

そしてお父さんは、自分の車に行ってしまった。


しくじった。

「結城、ごめん。」

私はその場で、頭を下げた。

「こんな時に、結城の力になれないなんて。いつも迷惑かけてるのに。」

何で私、役に立てないんだろう。

「浅見、車に乗って。」

「えっ……」

「いいから乗れって。」

言われた通りに車に乗ると、結城が私のシートベルトを締めた。

私の目の前に、結城の顔がある。

「今から、浅見の家に行ってもいいか。」

「いいけど、どうしたの?」

吸い込まれそうな瞳。見つめるその先に、私が映っている。

「恭香。」

「う、うん。」

「今から、お前を抱く。」
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