弟じゃない弟と、秘密の2人暮らしはドキドキに溢れてる。
走って帰った。

乃愛ちゃんにごめんねとだけ言って、走って家まで帰った。


何かから逃げたくて。



「おかえり瑠璃ねーちゃっ」

ソファーに座って芸術祭の課題曲を口ずさむ真白の腕をグイッと引っ張った。

イヤホンを外した手をソファーの後ろから思いっきり引っ張った。

「え、何!?」

「真白…やっぱ乃愛ちゃんに教えてもらいなよ」

「え…?何?どうしたの急に?」

ぎゅっと力を入れる、でもたぶん私の力なんか大したことない。

でも力を入れたのは震えてることに気付かれないため。

俯いてるのは潤んだ瞳を見られらないため。

「…瑠璃ねーちゃん?」

「私じゃ上手く教えられないし、乃愛ちゃんピアノやってるからリズム感とか音感ちゃんとしてるしそっちの方がいいと思う!」

「うん?でも俺もう覚えたよ、なんなら1人でも出来るし」

「みんな芸術祭本気なんだからちゃんとやった方がいいよ!!」

声が大きくなっちゃった、怒鳴るみたいに。

「…ちゃんとやってるけど?俺だって」

あ、どうしよう真白を怒らせちゃう。

俯いた顔が上げられない。

真白の顔が見られない。


今見られたら、私がどんな顔してるのかわかっちゃうから…っ

< 66 / 136 >

この作品をシェア

pagetop