弟じゃない弟と、秘密の2人暮らしはドキドキに溢れてる。
手を引っ張られたからおでことおでこがぶつかるかと思った。

それくらい近くてびっくりして目を開いちゃった。

「俺、男なんだけど?」

「…っ」

大きな瞳が近付いて来る。

心臓がバクバクはち切れそうなくらい音を出してる。


あぁ、どうしよう。


もう目を逸らせない。

視線を外せない。



真白しか見えなくて。



「嫌だったら言ってよ、やめるから」

「……。」


真白の吐息が頬にかかる。


ドキドキして息の仕方を忘れそうになる。

ドキドキがもうずっと、止まってくれないよ。

 
「瑠璃」 


もうドキドキさせないで。


「嫌じゃ…、ないけど」


声を振り絞って、ドキドキして震えそうになる声を。 

「ないけど?」

「嫌だって言わないと私が止まらなくなる…!」
 

抗えなくなるから、こんなに真白に近付いたらどうなっちゃうかわかんないよ…っ


「じゃあ止めないでよ」


私しか映らない大きな瞳は次第に見えなくなって、掴まれた腕は力を失くしていく。


このまま真白のシャツを掴んだら、私は一体どうなるんだろう?

どうしたらいいの、もうわかんない…っ


「俺のことだけ考えといて」


目を閉じた真っ暗な目の前、真白の声だけが体に入って来る。


くちびるに触れる柔らかな感触にドキドキが溢れるばかりで。



もう何も考えられない、真白のこと以外。


< 74 / 136 >

この作品をシェア

pagetop