弟じゃない弟と、秘密の2人暮らしはドキドキに溢れてる。
「ただいま~!!瑠璃!真白!」


ガタンッ 


重低音が部屋に響く、やばっ!

下の階に聞こえてないかな!? 


「真白久しぶりねぇ!…何してるの?」

「か、母さん…久しぶりだね!ついついウトウトしちゃった!」

ソファーの下に背中から落ちた…、落とされた真白が寝転がった状態でお母さんに手を振った。

ガラガラガラッてぶっきらぼうな音をさせながらキャリーケースを引いて入って来たから気付いた瞬間、咄嗟に真白の胸を思いっきり突き飛ばしちゃった。

体制を崩した真白は支えるものがなくて体が後ろに倒れて床にどんっって…


ごめん、絶対痛かったよね!?ごめん!


てゆーか、なんで…!?


「お母さん!出張は1ヶ月じゃなかったの!?」


ソファーに乗ったまま膝を立てて振り返る、思わず目を開いちゃった。

だってまだお母さんが出張に行ってから3週間、帰って来るのは…


「まだ1週間出張じゃないの!?」


キャリケースを置いたお母さんがくるーっとソファーを回って床に転がった真白の元にしゃがみ込んだ。

手を添えて背中を起こしながら、目を開く私にあっけに取られたような顔で答えた。


「だって、心配じゃないの」


あまりに純粋な瞳ですごく正論を答えられたから、2回瞬きしちゃった。

「……うん、ありがとう」

そ、そうだよね…

それが正解だよね、姉弟(きょうだい)じゃない男女がひとつ屋根の下で一緒に暮らしてると思ったら…

「真白大きくなったわね~!」

「8年ぶりだからね」

「大変だったね…、大丈夫?」

背中をさすって、お母さんがお母さんの目をして真白に問いかけて。

「うん…、母さんは元気だった?」

「元気元気、もうすっごい元気!」

ううん、娘と息子が待ってるんだもん心配だよね。

「お母さん!」

「なぁに、瑠璃?」

そうだ、ずっと家族だったもんね。

「おかえり!」

きっとお母さんもそう思ってるよね、あの頃の思い出のまま。

「ただいま!」
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