任侠☆バイオレンスラブ
大きめのスウェットを着て、タオルで髪を乾かしながら制服を持って脱衣所を出る。
その目の前には、腕組みをしたまま壁によりかかっていた樹さんがいた。
「い、樹さん?待ってたんですか?」
扉を締めながら壁によりかかっていた樹さんに声をかける。
私が出てきたことに気付いた樹さんは、壁に寄りかかるのをやめ、私の方に視線を向ける。
その時、一瞬目を見開いて驚いているようだった。
「・・・他のやつが入ってきて鉢合わせとかになったら嫌だろ」
「ま、まぁ・・・そうですけど・・・」
私から視線を逸らし、頭を掻きながらぶっきらぼうに言葉を口にする樹さん。
だからといって、待たせちゃったのはさすがに申し訳ないというか・・・なんというか・・・。
「次からは鍵かけろよ。脱衣所、鍵かけられるようになってるから」
「え、鍵?」
「あぁ。今回は着替え持ってくからかけるように言わなかった」
鍵をかけられると言われて、扉を見てみる。
確かに、外側からでもわかるように鍵がかけられるようになっていた。
「・・・身体冷やす前に部屋行くぞ。その格好でうろつかれるとさすがに目の毒だ」
「目の毒?」
「・・・なんでもねぇ。ほら、行くぞ」
目の毒ってなんだろう・・・そんなに変な格好してないと思うんだけどな。
そんなことを考えながら、案内してくれる樹さんの後ろをついていく。
「さっきも説明したが、部屋は俺の隣だ。何かあったら俺を呼べ。すぐ行く」
「はい」
廊下を歩きながら部屋へ向かっている最中、前から伊瀬さんが歩いてきた。
「あ、伊瀬さ──わ、なに!?」
伊瀬さんの名前を呼ぼうとした時、突然首にかけていたバスタオルを取り、頭から被せてくる樹さん。
そのせいで、突然前が見えなくなって慌ててしまう。
「新一、さっさと風呂入ってこい」
タオルをかけただけでなく、タオルの上から頭を押さえてくる樹さん。
まるで、伊瀬さんに私を見せないようにするかのように。
「・・・分かりましたよ。・・・白石さん、おやすみ」
「え!?お、おやすみなさい?」
タオルをかけられたまま伊瀬さんの声に答える。
すると、伊瀬さんの足音が徐々に遠のいていった。
完全に音が聞こえなくなって、ようやく頭から手を離した樹さん。
「な、なにするんですか?」
「・・・別に。ちゃんと髪乾かしてねぇなと思っただけだ」
「だからって、急にタオル被せなくてもいいじゃないですか。ビックリしたんですからね?」
「そりゃ悪かったな」
タオル越しにワシャワシャと頭を撫で、前を歩いていく樹さん。
そんな樹さんを不思議に思いながらタオルを首にかけ直して後を付いて行った。