任侠☆バイオレンスラブ
樹さんに手を引かれ、食事処にたどり着く。
もう既に何人か集まっているようで、席があまり空いていなかった。
「・・・女将さん、飯2つ」
だけど、樹さんはそんなことを気にせずズカズカと入っていき、厨房の方にいる人に向かって声をかけ、空いている席へと座った。
手を引かれてるので必然的に私もついていかざるを得なくてその場に立ち尽くしてしまう。
「・・・何してる、早く座れ」
「あ、はい・・・!」
隣に座ること確定なんだ。
そんなことを思いながら、樹さんの隣に座った。
「おっ、お嬢さんも来たのか。おはようさん」
「あ、おはようございます」
席につくと、近くにいた人達に声をかけられる。
見た目は少しだけ怖い人達だけどいい人みたいだ。
「樹のヤロー怖くないか〜?コイツ、愛想ねぇからよ」
わざわざ私の隣に来て肩に腕を回しながら聞いてくる。
ちょっと・・・距離近くない?
「んー?どうした?固まってるけど・・・もしかして、男に慣れてない?」
あまりの近さに固まっていると、ずいっと顔を近付けられる。
急な出来事に反応出来ずに、されるがままになってしまう。
「おい、やめろ」
どうしたらいいか分からずに困っていると、樹さんが肩に腕を回してきた男の人を引き剥がした。
距離感が近くてどうしたらいいか分からなかったから、ちょっとだけホッとする。
「ちぇ、ノリ悪ぃな〜・・・良いだろ?ちょっとぐらい」
「うるせぇ、さっさと飯食ってどっか行け」
嫌そうな顔をしながら絡んできた男の人に言葉を投げかける樹さん。
樹さん、今日機嫌悪いのかな?
「へいへい、またね。お嬢さん」
そう言って、私の隣に座った男の人は自分の元いた席へと戻っていった 。
「・・・悪いな、大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫です。ちょっとビックリしただけなので。ありがとうございます」
「気にするな」
「樹ちゃん、持ってきたわよ」
そんな会話をしているうちに、食事が運ばれてくる。
女将さんって言ってたし、厨房はこの人が切り盛りしてるんだろう。
「はい、お嬢ちゃんもね」
「ありがとうございます。いただきます」
「はい、召し上がれ」
目の前に食事を置いてくれた女将さんにお礼を言うと、ニッコリと優しい笑みを浮かべた。
厨房へと戻っていく女将さんの後ろ姿を見送ったあと、視線を目の前に置かれた食事に向ける。
樹さんは何も言わずに既に食べ始めていた。
「いただきます」
それにつられるように、私もご飯を食べ始めた。