任侠☆バイオレンスラブ

少し迷子になりながら、厨房へと向かう。



すると、女将さんも厨房にちょうど来たところみたいでエプロンをつけていた。



「女将さん、料理作るの手伝います」



「あら!芽依ちゃん手伝ってくれるの?嬉しいわぁ!」



準備をしている女将さんに声をかけると、とても嬉しそうにしながら両手を合わせていた。



「他の子なんて、手伝いの“て”の字もないような子だったからホントに助かるわ。じゃあ、お味噌汁とサラダをお願いしようかしら」



「分かりました」



手にしていたエプロンを身につけ、手を洗ってから料理に取り掛かる。



いつも通りの手順でテキパキとなめこの味噌汁を作る。



味噌汁を作る合間に、サラダも作っていく。



とは言っても、サラダは直ぐに出来上がった。



「あら、随分と手際がいいわね。もしかして、いつもお手伝いしてたのかしら?上手だわ」



「あー・・・まぁ、そうですね」



女将さんの問いに少し濁しながら答える。



両親がいないから必然とやらざるを得なかった、と言った方が正しいけど・・・そう言ったら気まずい空気になっちゃいそうだしね。



「あの人達、こんなに可愛い子ちゃんの手料理が食べられるなんて、なんて贅沢なのかしら」



「いやいや、そんなことないですって。女将さんの美味しいご飯食べられる方が贅沢ですって」



「あらヤダ!嬉しいこと言ってくれるわね〜!!ごはん大盛りにしちゃうわ!」



「アハハ、食べきれませんって」



女将さんと笑いながら料理を続けていくと、食堂につながる扉が開いた。



「女将さぁーん・・・お腹すいたァ・・・!今日のメニューなんですかー?」



扉を開けたのは、制服を着た伊瀬さんだった。



ぐぅ・・・っと小さくなるお腹を押さえながら、空腹を訴えてきている。




「あら、新一くん。今日は青椒肉絲(チンジャオロース)よ。しかも!今日は芽依ちゃんか手伝ってくれてるの!」



「あー・・・だから白石さんもいたんだ。何作ってるの?」



「なめこの味噌汁とサラダです。私の分はもうすぐ終わります」



「やった!俺なめこの味噌汁好きなんだよね〜!」



嬉しそうに微笑む伊瀬さんの後ろから矢吹さんも顔を出した。



矢吹さんもお腹すいたのかな?



「全く・・・帰ってきたって聞いてたのに姿が見えないからどこに行ったかと思えば・・・新一、お前食い意地張りすぎ」



「だってお腹すいてる時にいい匂いがしてきたんだもん」




どうやら矢吹さんは伊瀬さんを探していたようだ。



伊瀬さんはこの匂いにつられてここに来たみたい。



意外と食いしん坊なのかな、伊瀬さん。




「あらあら、全くしょうがないわね・・・本当なら7時にならないと提供しないけど・・・仕方ないわね。早く出してあげるわ。もうすぐ出来上がるから着替えてらっしゃい」



「やった〜!女将さん大好き!!」



そう言い残してバタバタと走って厨房から出ていく伊瀬さん。



矢吹さんはそんな彼の背中を見ながら、やれやれ・・・と呟きながら頭をかいた。



「困った奴だな全く・・・。悪いな女将さんにお嬢さん。邪魔したな」



そう言い残して、矢吹さんもその場から立ち去る。



矢吹さん、振り回されてるなー・・・。



「さっ、出来たわ。芽依ちゃん、盛り付けするからお皿とお茶碗をとってもらえるかしら?」



「わかりました」


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