任侠☆バイオレンスラブ
女将さんと一緒に盛りつけをして提供をしていると、厨房の扉が音を立てて開いた。
「なんだ・・・ここにいたのか・・・」
そこに居たのはホッとしたような様子の樹さんだった。
だけど、少しだけ息が上がっているようにも見える。
「どうかしたんですか?息も上がってますけど・・・」
「どうかしたんですか?じゃねぇ。お前が部屋にいねぇから探してたんだよ」
「す、すみません。お世話になるのに何もしないのは申し訳ないなって思ったらいてもたってもいられなくて・・・」
少しだけ怒ってそうな樹さんのことを見て、思わず謝る。
なんの用事かは分からないけど、息が切れるほど慌てて探してくれたってことだもんね。
「・・・別に気にしなくていいだろ。ここで過ごすことになったの、俺のせいなんだから」
「でも、どんな理由であれお世話になるからには何かしらしないと申し訳ないじゃないですか」
「ふっ・・・そうかよ」
「!!」
私の言葉を聞き、優しい笑みを浮かべる樹さん。
優しい顔をしている樹さんは見た事あったけど、笑っているのは初めて見る。
見たことの無い樹さんの表情に、胸がドキッと高鳴った。
「女将さん、コイツ借りるぞ。この様子じゃ、飯食わずに最後まで手伝い続けそうだ」
「もちろんいいわよ。あとは後片付けだけだもの。はい、2人の分のご飯」
「あぁ」
そう言って、盛り付けした食器をおぼんの上に載せ、2つ差し出してくる女将さん。
それを短く返事をして両手で受け取る樹さん。
「ほら、飯食うぞ」
「あ、はい!」
エプロンを外し、軽く畳んでから樹さんの隣に並んで歩く。
「自分で持ちます」
「ん?・・・俺が持ってく。お前エプロン持ってるだろ。おぼん落とすぞ」
そう言って、食堂まで運んでくれる樹さん。
確かにエプロン持ってるけどおぼん持てないほどかさばるものでも無いのに・・・。
そう思いながら樹さんが座った隣の席に着くと、目の前で伊瀬さんた矢吹さんが座ってご飯を食べていた。
「お、珍しいな。お前がこの時間に来るなんて」
「・・・悪ぃかよ」
「いや、悪ぃなんて言ってねぇだろ?珍しいと思っただけだ」
目の前にあるご飯を食べながら、樹さんを見ている矢吹さん。
矢吹さんの言い方からして、樹さんは滅多にここに来ないのかもしれない。
でも、滅多に来ないならなんで今日は来たんだろう?