任侠☆バイオレンスラブ
花見をした1週間後──
女将さんに頼まれた物を買いに行くためにコンビニへと向かっているんだけど・・・。
「歩いて10分もかからない所に着いてこなくても・・・」
近くのコンビニに行くだけなのに、樹さんが付き添いで来てくれたのだ。
本当は1人で行こうとしてたんだけど、樹さんに呼び止められてこうなってしまった。
「何かあってからじゃ遅ぇからな」
「そうかもしれませんが・・・大変じゃありませんか?それじゃなくても、お仕事忙しいのに・・・」
「問題ねぇ。心配すんな」
周囲を警戒しながら淡々と口にする樹さん。
樹さんだって暇じゃないだろうに・・・無理してないかな?
「・・・そうですか?」
「あぁ。気にすんな」
当たりをキョロキョロしながら歩く樹さんは、気にするなと口にする。
だけど、毎回出かけるたびにお願いするのも申し訳ないんだよな・・・。
そう考えていた時──
「芽依」
「っ・・・!?」
名前を呼ばれて樹さんの方を見ようとした瞬間に肩を抱き寄せられた。
急なことで驚きと困惑で心臓がバクバクと高鳴り出す。
頬に熱が集まっていくのが手に取るように分かる。
あまりの距離の近さに以前に首筋にキスマークを付けられた時のことを思い出してしまう。
その瞬間、近くを自転車が通り過ぎて行った。
もしかして、自転車から庇ってくれただけ・・・?
「危ねーから、前見とけ」
「は、はい。ありがとうございます・・・」
肩に回っていた腕が離れるのと同時に、下を向きながら樹さんにお礼を言う。
色んな意味で恥ずかしい・・・!!
「・・・何照れてんだよ」
チラッと私を見た樹さんが、私が照れていることに気付いたようで声をかけてくる。
そこは触れて欲しくなかったな〜・・・!!
「だっ、だって・・・樹さんが近くて・・・」
「!・・・・・・慣れろ」
「む、無理です!!」
驚いたような表情を見せながら簡単に言う樹さん。
こっちは樹さんに首筋に跡をつけられてから意識しまくってるのに慣れるわけが無い。
「・・・そうか。じゃあ、俺にだけ見せろ」
「・・・え?」
「その照れた顔、俺にだけ見せろ」
「え、えっと・・・」
真剣な表情をしながら、私を見つめる樹さん。
その表情にどう返事をしたらいいか分からない。
どうしてそんなことを言うのかも・・・わからなかった。
「わかったな?」
「わ、わかりました・・・」
「それでいい」
樹さんの言葉の圧に負けて頷くと満足気な表情をして前を向く樹さん。
私は、そんな彼の横顔を見つめることしか出来なかった。