任侠☆バイオレンスラブ
新一くんは、気を利かせて廊下から誰もいない居間へと連れてきてくれる。
新一くんと向かい合うように、座布団に座った。
「それで?どうしたの?」
座布団にこしかけながら、私の目の前と自分の前にお茶を置きながら話を切り出す新一くん。
私は、少し戸惑いながらも口を開いた。
「・・・あのね、私・・・好きな人が出来たんだけど・・・その人、大事な人がいるみたいなの」
「!」
差し出されたお茶の容器を指でなぞりながら、ポツポツと話し始める。
それを聞いた新一くんはピクリと反応した。
「・・・もしかして、兵頭組の人?」
「・・・うん」
「誰?圭介さん?」
「・・・樹さん」
少し照れくさいけど、うつむきながら素直に樹さんの事だと伝える。
まさか圭介さんのことを話題に出されるとは思わなかったけど・・・。
「?樹さん?」
「うん、樹さん」
私が名前を出すと、不思議そうな表情をしながら名前を確認する新一くん。
そんなに意外だったかな?
「うーん・・・別に気にする必要ないと思うけど・・・」
「なんで?」
「なんでって・・・だって、樹さんは芽依ちゃんの事──」
そう言いかけて、ピタッと止まる新一くん。
どうしたんだろ・・・?
「樹さんは?」
「・・・いや。樹さんに限らず、片思いってつらいかもしれないけど、人を好きになることは悪いことじゃないから。その気持ち、大事にしなね」
「う、うん・・・わかった」
さっきとは違う言い回しに少し不思議に思いながらも頷く。
大事にしな・・・か。
でも、苦しいよ・・・好きな人が自分以外に大事な人がいるってのは。