任侠☆バイオレンスラブ
「なんや!?」
「芽依に手ぇ出すんじゃないわよっ!!」
「う゛ぁっ・・・!?」
煙で充満している部屋の中で、浜松組の若頭のうめき声が聞こえる。
それにしても今の声・・・どこかで聞いたことあるような・・・。
煙が霧散していき、ある程度視界が開けてきた時、浜松組の若頭が大勢の男の人に取り押さえられているのが見えた。
そして、その目の前に高校で同じクラスの私の親友、小春がたっていることに気がつく。
「えっ・・・!?小春!?」
なぜ小春がここにいるのかわからず、頭の中に大量のハテナが浮かぶ。
だって小春は他の子より運動神経の良い、活発な女の子ってだけであって、こんなところに来るような子じゃ・・・。
「芽依、大丈夫?今縄を──」
色々考えている時、小春が私に近付こうとしていた。
だけど、それを遮るようにして樹さんが目の前に駆け寄ってくる。
「芽依、怪我は?」
「あ・・・はい、大丈夫です・・・」
状況が呑み込めずに呆然としていると、樹さんが私を拘束していた縄を解いてくれる。
シュルシュル・・・と音を立てて解けていく縄。
完全に自由になった時、小春の方を見つめた。
「それにしても、どうして小春がここに・・・?」
「私、桜田組の若頭だから。友好関係にある兵頭組が総出で芽依のこと探してたから協力したの」
「は・・・はぁ!?」
私の問いに対して帰ってきた言葉に驚きの感情を抑えきれず叫んでしまう。
小春が・・・桜田組の若頭ぁ!?
そんなこと一言も・・・!!
「なんだ、言ってなかったのか。お前のことだから俺の事見た時にでも言ってるもんだと思ってた」
「さすがに言いませんよ。兵頭組に身を寄せてるってわかった時は言った方がいいかなとは思いましたけど」
「え・・・?えっ・・・!?」
2人の会話についていけず、頭が混乱する。
小春は桜田組の若頭で・・・。
隠してるつもりだったのに、私が兵頭組にお世話になってることに気付いてて・・・?
話しぶりからすると、2人は面識があったってこと・・・!?
「お嬢!こいつどうします!?」
「ふん縛って放置でいいわよ。芽依に手は出てないみたいだし」
「へい!!」
話に追いつけずいっぱいいっぱいになってる時、小春の部下の人達?が小春に対して指示を仰ぐ。
あぁ・・・本当に桜田組の若頭なんだ・・・なんて、改めて認識する。
部下の人達が浜松組の若頭を縛り付け終わった時、その人の口元から血が滲んでいるのが見えた。
「あ・・・」
それを見た瞬間、私は柱に縛り付けられた浜松組の若頭に近付いていく。
「おい、近付くな」
「なんや、仕返しか?好きにしたらええ。どーせ動けんからな」
近付いて行くと、浜松組の若頭は私のことを見上げながら悪態をつく。
そんな中でも、口元の傷が目に入っていた。
ポケットから絆創膏を取り出し、口元にある傷の上に貼り付ける。
「血、出てますよ」
「!?・・・お前さん。俺、アンタをさらったんやで?もっと他にやることあるやろ」
私の行動に目を丸くしたあとに恐る恐る訪ねてくる浜松組の若頭。
確かにさらわれて、すごく怖かったけど・・・。
「まぁ、さらわれたのはすごく怖かったですけど・・・私、何もされてませんから」
「っ・・・!ハハッ・・・なるほどな・・・こういうところか・・・」
なにかに気付いたように、呆れ気味に笑う浜松組の若頭。
その時の表情は、とても穏やかだった。
「芽依、帰るぞ。変に長居するところじゃねぇ」
「はい」
「桜田組も、ありがとな。助かった」
「いーえー。芽依が無事で何よりですから」
樹さんは、桜田組の皆さんに声をかけてから、私の腕を引いて車の中に入っていった。